2016年9月3日土曜日

マイクロソフトのMobile戦略は詰まるところはinTuneの販売にある。

Microsoft社のクラウドでの成功

Microsoft社のCEOにサティア・ナデラ氏が就任したのは2014年の24日である。今が2016年の92日なので、約2年半が過ぎたに過ぎないが、私個人の体感としては10年間は言い過ぎでも、8年ぐらいが経ったような気がする。この2年半、Microsoftのビジネスは大きくクラウド製品へとシフトすることに成功した。Office 365、Azzure等のクラウド製品の成功は、IT業界に従事している人間ならだれもが理解しているところであるが、2年半前、多くの企業はOffice 365の導入にはそれほど前向きではなかった。それが今日ではこれらの製品を利用するのは既に当たり前の時代に突入している。

2年半前当時、まだ、Microsoft社の主たる敵はGoogle Appsとされ、日本マイクロソフト社内では、Google Apps対抗マニュアルが社内で配布されていた。それが現在ではGoogle Appsはもはや敵ではなくなり、私自身もNotesからOffice365の以降のみならず、Google Appsからの移行で相談を受けることが多い。




Office for iPhone、iPad、Androidは無料でも編集が出来る。


ただ、個人的には最も成功したと感じているのは、Mobile戦略である。目下MicrosoftはApple社が提供しているAppStore、Google社が提供しているGoogle Playから無料でOffice for iPhone、Office for iPad、Office for Androidを提供している。Microsoftはリリース当初から、Office 365サービスに加入しないと、編集が出来ないと発表していたが、今日では編集も含めてほとんどすべての機能を利用することが出来ている。Office for iPhone、Office for iPad、Office for Androidは、優れた表示レンダリング機能があるため、Windows PC上で作成したWord、Excel、PowerPointを忠実に表示することが可能である。本投稿ではこの部分には多くの文字数を敢えて割くことはしないが、そのユーザビリティにより世界中の多くのユーザがダウンロードして利用している。

これら一般コンシュマー向けに成功したかに見えるOfficeのモバイル戦略はフリーミニアムに立脚している。フリーミニアムとは、無料で多数のユーザからの認知を獲得し、約5パーセントのユーザに費用を支払ってもらうという、もはやネットビジネスとしては当たり前となったビジネスモデルである。しかし、上記の通りMicrosoftのOffice製品は、編集も含めてほとんど全ての機能を利用することが出来、正直Office 365に加入する必要性は無い。OfficeスイートはMicrosoftの市場優位性の根本であることは、誰もが否定するものではなく、Office ProPlusでさえ、それなりの価格での提供となっている。では、Microsoftはどうして、Mobileだけに限り無料で利用を促しているのかという疑問がここで出てくる。

Microsoftが提供するその他のアプリ

Microsoft社は上記以外にもメール関連ではOWA、SharePointではSharePoint Mobile、Sharepoint Newsfeed Mobile、その他にもSkype for Business、OneDrive for Business、Delve、Office 365 Message Encryption Viewer 、Office Admin等のOffice 365関連製品の他、OneDrive、Outlook、そして、その他Xbox関連のアプリなど、既にできるだけあらゆるものをiOS、Androidアプリで提供し始めている。既にMicrosoftは自社が提供するWindows Mobile、そしてリリース後一切盛り上がりを見せていない、Windows Storeアプリでの成功はあきらめ、iOSとAndroidユーザへのアプリの提供に余念がない。


Office 365をスマートデバイスで利用する上の問題点

どの会社も個人情報と社内機密情報の漏洩は大問題ととらえる。大企業であればあるほど個人情報、社内機密情報の漏えい対策講じるものである。ところで、Microsoftの各種Word、Excel、PowerPoint、SharePoint Mobile、OneDrive等を利用する上で問題になることが一つある。それはユーザ個人のDropBox、OneDrive、SharePoint Onlineに企業で使っているデータをそのまま保存してしまうことが出来てしまうことである。

企業でSharePoint、OneDrive for Businessを利用する場合、機密情報が保存されていることはもはや日常茶飯事である。個人情報の保存をたとえ禁止したとしても、そこに確実に個人情報は社内ユーザによるミス等でアップロードされてしまう可能性は多いにある。

それが、Microsoft社のMobileアプリを利用すると、簡単に自身のDropBox、OneDrive、SharePoint Onlineに保存がされてしまう。日本のEnterprise企業がMobileでのOffice365利用を制限、にの足を踏むのはこれが理由である。



上記問題点の解決をするMobile Application Managementツール

解決にはMobile Application Management(MAM)が必要になる。Mobile Device Management(MDM)と異なりMAMは各アプリケーションの制御をIT管理者の管理下に置く中間ソフトウエアである。MAMを利用すると、上記のような個人のストレージにデータを保存させることを禁止することが可能である。MAM市場における代表的な製品はMicrosoft社が提供するInTuneの他、Mobile Iron社が提供するMobile Iron、VMWare社が提供するAirWatchがある。

もともとこの分野はMobile Ironが独自に形成した市場である。そこにVMWareのAirWatchとMicrosoft InTuneが猛追をかけている。

この投稿では詳細を省くが、Mobile Iron社の素晴らしい点はKeberos認証のトークンを制御することで、社内の各アプリケーション、クラウドサービスにシングルサインオンを実現することにある。弊社は長らくMobile関連の開発、コンサルティングを行ってきたが、日本の各分野でのEnterprise企業でのMobile Ironのシェアは以前高い。

いずれにせよ、Microsoftの狙いとしてはInTuneを販売するため、あえて企業のIT管理者からしたら穴と思われるような状態にしている。

MAM市場の現状

Mobile Iron社が形成したMAM市場を目下、VMWare社(AirWatch)とMicrosoft社(InTune)が猛追している。

ながらく、Mobile Ironはその価格が高いと市場では言われてきた。2010年~2013年までは目立った競合が無いため、Mobile Iron社はあっという間に市場でのブランドを確立することに成功してしまった。

VMWare社は目下のところ、米国本国でも、日本でも価格攻勢を仕掛けている。弊社がコンサルティング業務に入ると相見積もりを取ることが多いのであるが、ここ半年の価格攻勢には目を見張る。

ところで、Microsoft社はこれまでと同じ通り、他の主力製品と組み合わせて安くするといういつもの戦略でInTuneを市場で売りまくろうとしている。しかし、これが外から見ているとあまり上手くいっていない。過去2年間Microsoftの戦略はEnterprise Mobility Suiteと呼ばれる、InTune、AzureActive Direcotry、Rights Managementの3製品をパッケージ化して販売している。この3つであるが、ある程度は製品の関連性はあるものの、ゆるやかである。また多くの企業が当製品を高価といった評価をしている。あと3割価格を安くするだけで、かなり浸透力は変わるとは個人的には考えている。